イントロダクション:誰もが投資家になれる新時代
かつて株式投資は、まとまった資金を持つ一部の人々のためのものでした。日本の株式市場では、伝統的に100株を1単元(売買単位)とする「単元株制度」が採用されており、有名な企業の株を購入するには数十万円、時には数百万円の資金が必要となるのが常でした。この高いハードルは、多くの人々にとって、資産形成の選択肢として株式投資を考える上での大きな障壁となってきました。
しかし、NISA(少額投資非課税制度)の拡充を追い風に、日本の投資環境は劇的な変化を遂げています。その中心にあるのが、1株に満たない「単元未満株」から、数百円や数千円といった少額で株式を売買できるサービスの台頭です。これらのサービスは、単に投資への入口を広げるだけでなく、ポートフォリオの精密なリバランスや、これまで手の届かなかった高価な「値がさ株」への分散投資を可能にする、洗練されたツールとしても機能します。
本レポートでは、この活気あふれる少額投資サービスの分野で、特に個性的で強力な選択肢となる3つの主要サービスを徹底的に分析・比較します。
第一に、楽天証券が提供する**「かぶピタッ™」**。日本最大のポイント経済圏を背景に、究極のアクセシビリティを追求する「エコシステム・イノベーター」です。
第二に、SMBC日興証券の**「キンカブ」**。大手証券会社の信頼性と、初心者から上級者まで満足させる柔軟性を両立させた「フレキシブル・ハイブリッド」と言えるでしょう。
そして第三に、野村證券の**「るいとう」**。伝統的なアプローチで、規律ある長期的な資産形成を支援する「ディシプリンド・アキュムレーター(規律ある蓄積者)」です。
この分野の競争は激しく、近年ではクレディセゾンの「セゾンポケット」が2026年5月をもってサービスを終了するなど、市場のダイナミズムを物語る動きも見られます。このような環境下で、安定的かつ長期的な視点を持つサービスを見極めることは、かつてないほど重要になっています。
本稿の目的は、これら3つのサービスを、投資手法、コスト構造、ポイント連携、そして最も重要かつ複雑な「株主としての権利」の観点から、表を一切用いず、テキストのみで徹底的に比較・解説することです。これにより、読者一人ひとりが自身の投資哲学やライフスタイルに完璧に合致したサービスを選び出すための、信頼できる羅針盤となることを目指します。
Section 1: エコシステム・イノベーター – 楽天証券「かぶピタッ™」の全貌
2025年7月16日にサービスを開始した楽天証券の「かぶピタッ™」は、単なる少額投資サービスではなく、楽天グループが築き上げてきた巨大な経済圏の力を背景にした、戦略的な金融商品です 。その設計思想は、投資のあらゆる心理的・金銭的ハードルを取り除くことにあります。
「金額指定」という革命
「かぶピタッ™」の最大の特徴は、株式を「株数」ではなく「金額」で指定して購入できる点にあります 。投資家は「トヨタの株を1株買う」と考える代わりに、「トヨタの株を1,000円分買う」という、より直感的で予算に基づいたアプローチが可能になります。最低投資金額はわずか100円から、1円単位で設定できるため、まさにポケットの中の小銭からでも始められる手軽さを実現しています 。
この「金額指定」モデルは、特に投資初心者にとって心理的な優位性を持ちます。従来の「株価 × 100株」という計算から解放され、「今月は5,000円を投資に回そう」といった自然な家計管理の感覚で取引を始められるのです 。サービス開始当初はNISA口座での取引に限定されており、税制メリットを意識する新規投資家層を戦略的に取り込もうとする意図が明確に見て取れます 。
コストとアクセシビリティ:「手数料無料」の約束とその内実
「かぶピタッ™」は「取引手数料0円」を強力に打ち出しており、これが大きな魅力となっています 。しかし、取引コストが完全にゼロというわけではありません。実質的なコストとして「スプレッド」が存在します。これは、取引の基準となる東京証券取引所の価格に対して、買付時は0.22%を上乗せ(高く買う)、売却時は0.22%を差し引いた(安く売る)価格で約定する仕組みです 。このスプレッドが証券会社の収益源となります。「手数料無料」という言葉の裏にあるこの仕組みを理解しておくことは、賢明な投資判断のために不可欠です。
また、サービスはスマートフォン向けのウェブブラウザから完結するように設計されており、専用アプリのダウンロードを不要とすることで、いつでもどこでも取引できる利便性を最大限に高めています 。
楽天ポイントの力を活用する
「かぶピタッ™」のもう一つの柱は、楽天ポイントプログラムとのシームレスな連携です。利用者は貯まった楽天ポイントを1ポイント=1円として株式購入代金に充当でき、全額をポイントだけで支払うことも可能です 。これは、日常の消費活動が直接的に資産形成へと繋がる画期的な仕組みです。
このポイント投資は、単なる機能提供にとどまりません。楽天は、ポイントを消費の割引に使うだけでなく、将来のための「資本」として活用する新たな価値観を提示しています。これにより、利用者は楽天カードでの決済や楽天市場での買い物を、単なる消費ではなく「投資原資の獲得活動」と捉えるようになります。この循環が、利用者を楽天経済圏にさらに深く結びつける強力な引力として機能します。例えば、「かぶピタッ™」で投資するために楽天ポイントを貯めようと、楽天市場での購買や楽天カードの利用が促進され、それがまた新たな投資原資を生み出すという、自己強化的なループが生まれるのです。
ただし、この強力なポイント連携には一つ、極めて重要な制約があります。キャンペーンなどで付与される「期間限定ポイント」は、株式投資には利用できないという点です 。楽天のサービスを積極的に利用し、多くの期間限定ポイントを保有するユーザーにとっては、この点は注意すべき重要な制約となります。
「かぶピタッ™」投資家としての権利を理解する
少額投資であっても、株式を保有することには変わりありません。投資家としての権利がどのように扱われるかを正確に把握することが重要です。
まず配当金について、「かぶピタッ™」では保有している株数に応じて、1株未満の端数であっても比例的に配当金が支払われます 。これは投資家にとって直接的な金銭的リターンとなります。
次に株主優待ですが、これは大半の企業が1単元(通常100株)以上の保有を条件としています。「かぶピタッ™」を通じてコツコツと株式を買い増し、保有数が単元に達すれば、晴れて株主優待の権利を得ることができます 。サービスはこの蓄積を可能にしますが、単元未満の段階で優待権利を付与するものではありません。
議決権については、単元未満の保有では付与されません 。株主総会での議決権行使という、企業の経営に参加する権利は、単元株主となって初めて得られるものです。
最後に、法的に重要な株式の名義についてです。投資家が1株に満たない端数株を保有している間、その株式の名義は「楽天証券名義」として管理されます 。投資家の保有分が1株に達した時点で、その1株が投資家自身の名義に振り替えられるという仕組みです。この名義の所在は、法的な所有権のあり方を示す上で非常に重要なポイントです。
Section 2: フレキシブル・ハイブリッド – SMBC日興証券「キンカブ」の解剖
SMBC日興証券が提供する「キンカブ」は、長年の実績を持つ単元未満株取引サービスであり、その最大の特徴は圧倒的な「柔軟性」にあります。楽天証券の「かぶピタッ™」が初心者に特化したシンプルさを追求するのに対し、「キンカブ」は初心者から経験豊富な投資家まで、幅広いニーズに応えるハイブリッドな設計思想を持っています。
デュアルモード投資:柔軟性こそが鍵
「キンカブ」の核心的な強みは、注文方法を**「金額指定」と「株数指定」の双方から選べる**点です 。金額指定の場合は100円以上100円単位で、株数指定の場合は小数点以下第5位までという極めて細かい単位で注文が可能です 。
この二元的な機能は、異なるタイプの投資家を同時に満足させます。投資を始めたばかりの初心者は「1万円分だけ」といった分かりやすい金額指定を好む一方、ポートフォリオのリバランスを精密に行いたい中上級者は「あと3.14159株買い増したい」といった具体的な株数指定を求める場合があります。「キンカブ」はこの両方の要求に応えることができるのです。取引対象も東京証券取引所のプライム、スタンダード、グロース市場に上場する約3,900銘柄と非常に幅広く、投資先の選択肢に困ることはありません 。
取引コストの妙:非対称スプレッドの戦略
「キンカブ」のコスト構造は独特で、戦略的です。取引手数料という名目ではなく、スプレッド(売買価格差)によって実質的なコストが調整されますが、その設定が非対称なのです。
具体的には、買付注文の場合、約定代金100万円まではスプレッドが0%、つまり手数料が実質的に無料です。一方で、売却注文の場合は、100万円まで0.5%のスプレッドが課されます(基準価格より0.5%安い価格で約定)。そして、100万円を超える取引については、買付・売却ともに1.0%のスプレッドが適用されます 。
このコスト体系は、明確なメッセージを発しています。それは「少額での長期的な買付・保有(バイ・アンド・ホールド)を強く推奨する」というものです。資産を積み上げる際のコストは極限まで低く抑え、頻繁な売買や大きなポジションの売却には相応のコストがかかる設計になっています。これは、短期的なトレーディングよりも、安定した長期的な資産形成を促すという証券会社のビジネスモデルと合致しています。
dポイントとの連携
「キンカブ」はNTTドコモが展開するdポイントを利用した投資にも対応しており、この点で楽天証券の強力なライバルとなっています 。NTTドコモの携帯電話契約者や、d払いなどでdポイントを日常的に貯めている広大なユーザー層にとって、「キンカブ」は非常に魅力的な選択肢となります。
「自動スイング」による完全な株主への道
「キンカブ」が持つ、他のサービスにはない際立った機能が**「単元株自動振替(自動スイング)」です 。これは、投資家が「キンカブ」口座で株式を買い進め、その保有数が1単元(例:100株)に達した瞬間に、システムが自動的に**その株式を通常の証券口座(保護預り口座)へと振り替えてくれる機能です。
この振替こそが、株式の名義を証券会社から投資家本人へと移し、株主優待や議決権といった「完全な株主の権利」を確定させるための、決定的かつ重要なステップです。「自動スイング」機能は、この最も重要でありながら投資家が忘れがちな手続きを、完全に自動化してくれます。この機能は初期設定で有効になっており、投資家は意識することなく、最短で株主優待の権利などを確保できるのです 。
この機能は、単なる利便性の提供に留まりません。投資家が「キンカブ」というサービスを「卒業」することなく、最初の少額投資から本格的な単元株主になるまで、シームレスにサポートし続けるという思想の表れです。初心者が安心して投資を始め、成長してもなお使い続けられるプラットフォームを提供することで、顧客を長期的に囲い込む戦略的な狙いがあります。
ただし、この強力な機能には一つ、NISA口座における極めて重要な制約が存在します。NISA口座内で保有する株式については、この自動スイングが機能するのは、同一の暦年内に単元株数に達した場合に限られるのです 。複数年にまたがって買い集め、単元に達したNISA口座内の株式は自動振替の対象外となり、株主優待を受け取ることはできません。これはNISAを利用する投資家にとって、綿密な投資計画を要求する重要なルールです。
Section 3: ディシプリンド・アキュムレーター – 野村證券「るいとう」の伝統的アプローチ
野村證券の「るいとう」は、これまで見てきた楽天証券やSMBC日興証券のサービスとは一線を画す、伝統的かつ規律を重んじる株式累積投資サービスです 。その根底にあるのは、デジタルの柔軟性や低コスト競争ではなく、長期的な資産形成における「仕組み」の力です。
長期的・体系的な資産形成への集中
「るいとう」の核心は、**「ドル・コスト平均法」**という投資手法を忠実に実践することにあります 。これは、毎月決まった金額を自動的に投資し続けることで、株価が高い時には少なく、安い時には多く株数を購入し、結果として平均購入単価を平準化させる手法です。市場の短期的な変動に一喜一憂することなく、淡々と資産を積み上げていくことを目的としています。
このサービスはオンラインで完結するものではなく、取引店を通じて申し込む必要があり、より伝統的で対面サービスを重視したポジショニングであることがうかがえます 。
投資のパラメータとコスト体系
「るいとう」は、他の少額投資サービスと比較して、投資のハードルがやや高く設定されています。最低投資金額は1銘柄につき月々1万円以上、1,000円単位となっており、お試し感覚で始めるというよりは、本格的な積立を志向する投資家向けです 。
コスト構造も明快ですが、スプレッド方式の競合とは大きく異なります。買付時・売却時の両方で、約定代金に対して一律1.21%(税込)の手数料がかかります 。これは、少額の取引においては、楽天証券やSMBC日興証券のモデルよりも割高になります。投資は、顧客が指定した銀行口座からの自動引落しによって、毎月自動的に行われます 。
ポイント投資の不在
調査した資料からは、「るいとう」が楽天ポイントやdポイントといった主要なポイント経済圏と連携しているという情報は見当たりませんでした 。これは、日々の消費と投資を連携させたい現代のデジタルネイティブな投資家層にとっては、明確なデメリットと映る可能性があります。
「るいとう」における株主の権利
「るいとう」の枠組みにおける株主権利の扱いは、その長期蓄積という思想を色濃く反映しています。
配当金の扱いは特徴的で、受け取った配当金は現金として分配されるのではなく、自動的に同じ銘柄へ再投資されます 。これにより、複利効果が最大化され、純粋な資産の積み上げを目指す投資家にとっては理想的な仕組みとなっています。
株主優待と議決権については、他のサービスと同様に、投資家の持分が1単元(売買単位株)に達して初めて権利が付与されます 。
名義と振替のプロセスも明確です。単元に達するまで、株式は野村證券の「るいとう」口座名義で一括して管理されます。そして、投資家の持分が単元に達した時点で、その株式は「るいとう」口座から投資家個人の証券口座へと振り替えられ、名義も本人のものとなります(お客さまの名義になります)。この振替が完了して初めて、投資家は完全な株主としての権利を享受できるのです。
このサービスは、低コストや柔軟性を求める投資家ではなく、規律、自動化、そして大手証券会社との対面関係を重視する、異なる価値観を持つ層を対象としています。それは「自分でやる(Do-it-Yourself)」ツールではなく、「お任せする(Do-it-for-Me)」サービスなのです。一見すると高い手数料は、感情的な売買(例えば市場の暴落時に恐怖から売却してしまうなど)から投資家自身を守るための「規律の保険料」と捉えることもできます。柔軟なプラットフォームが誘発しかねない衝動的な取引を仕組みで封じ、ドル・コスト平均法という実証された戦略を強制的に実行させることに、このサービスの真の価値があると言えるでしょう。
Section 4: 比較分析 – あなたの道を選ぶために
ここでは、これまでの分析を統合し、各サービスの特徴を直接的かつ物語的に比較します。投資サービス選びは、単なる機能の比較ではなく、自身の投資哲学との対話でもあります。
投資スタイル:オンデマンド取引か、規律ある積立か
投資への向き合い方において、各サービスは根本的に異なる思想を提示します。楽天証券の「かぶピタッ™」とSMBC日興証券の「キンカブ」は、スマートフォンを片手に、自分の好きなタイミングで取引したいと考える現代的な「オンデマンド型」投資家のために設計されています 。これらは投資家に最大限のコントロールと柔軟性を提供します。
対照的に、野村證券の「るいとう」は、構造化された月々の貯蓄プランです。その本質は、日々の市場のノイズから距離を置き、長期的な視点で資産を着実に築き上げることです 。ここでの選択は、あなたが投資に「積極的な関与」を求めるのか、それとも「規律ある自動化」を求めるのかという、根本的な哲学の問いに他なりません。
取引の真のコスト:スプレッド 対 手数料
取引コストの構造は、長期的なリターンに大きな影響を与えます。少額から始め、長期保有を前提とする投資家にとって、理論上最もコストが低いのはSMBC日興証券の「キンカブ」です。100万円までの買付スプレッドがゼロであるため、資産を積み上げるフェーズでの負担がありません 。次いで、楽天証券の「かぶピタッ™」は、買付・売却ともに一律0.22%のスプレッドであり、シンプルで予測可能です 。野村證券の「るいとう」は、買付・売却の両方で1.21%の手数料がかかるため、少額取引においては最もコストが高くなります 。
しかし、この単純な比較にはトレードオフが伴います。頻繁に、あるいは大きな金額を売却する予定がある場合、「キンカブ」の売却スプレッド(0.5%または1.0%)は無視できないコストになります 。その場合、楽天証券の一貫した0.22%の方が有利に働く可能性があります。野村證券の手数料は高率ですが、その透明性とシンプルさは一つの利点です。
ポイントの力:楽天経済圏 対 dポイント経済圏
ポイント投資の可否は、現代の投資サービス選びにおける重要な分岐点です。楽天のサービス(楽天市場、楽天カード、楽天モバイルなど)を日常的に利用する「楽天経済圏」の住人にとって、「かぶピタッ™」は自然かつ強力な選択肢です。日々の消費活動で得たポイントが、そのまま投資資本へと変わるシナジーは他に類を見ません 。ただし、期間限定ポイントが使えないという制約は、計画を立てる上で常に念頭に置く必要があります 。
一方で、NTTドコモのユーザーやd払いの利用者にとっては、SMBC日興証券の「キンカブ」が同様の強力な連携を提供します 。どちらを選ぶかは、投資家がどちらのデジタルエコシステムに深く根ざしているかによって決まるでしょう。このトレンドに対し、野村證券の「るいとう」は参加しておらず、伝統的な金融サービスの枠組みを維持しています。
完全な株主への道のり:権利獲得プロセスの比較
株主優待や議決権といった完全な株主権利を得るためには、どのサービスを利用しても最終的に1単元を保有する必要があります。しかし、そこに至るまでのプロセスには顕著な違いがあります。
最もユーザーフレンドリーな道筋を提供するのは、SMBC日興証券の「キンカブ」です。その「自動スイング」機能は、単元株数に達した株式を自動的に個人の証券口座へ振り替えるため、投資家は権利確定日を逃すリスクを最小限に抑えられます 。
野村證券の「るいとう」も、その仕組み上、単元に達した株式は自動的に個人の名義へと振り替えられます 。これはサービスの基本設計に組み込まれています。
楽天証券の「かぶピタッ™」では、このプロセスがより手動に近い可能性があります。投資家自身が保有状況を把握し、1単元に達した際に名義変更などの手続きを意識する必要があるかもしれません。
ここで再度強調すべきは、「キンカブ」のNISA口座における特殊ルールです。自動スイングが機能するためには、単一の暦年内に単元株数を取得する必要があり、NISAを利用する投資家にとっては極めて重要な計画上の考慮事項となります 。
Section 5: あらゆる投資家に向けたテーラーメイドの推奨
これまでの分析を踏まえ、投資家のタイプ別に最適なサービスを提案します。
「ポイント最大化主義者(ポイ活投資家)」のために
- 最有力推奨:楽天証券「かぶピタッ™」 日本の大多数のポイント収集家にとって、楽天エコシステムは圧倒的な存在感を持ちます。楽天市場での買い物や楽天カードの利用で得たポイントを、直接株式に転換できる統合性の高さは、他の追随を許しません 。このタイプの投資家にとっての価値命題は、獲得したポイントの効用を最大化することにあります。
- 代替案:SMBC日興証券「キンカブ」 NTTドコモのヘビーユーザーや、dポイントを熱心に集めている投資家にとっては、こちらが強力な選択肢となります。最終的な決定は、自身がどちらのポイントプログラムを主軸に生活しているかによります。
- 選定理由: この投資家層にとっての判断基準は、投資サービス自体の優劣よりも、自身の既存のポイント獲得習慣との整合性です。「かぶピタッ™」と「キンカブ」は、それぞれが巨大な経済圏の出口として機能しており、選択は自ずと決まってきます。
「慎重な第一歩を踏み出す投資初心者」のために
- 最有力推奨:楽天証券「かぶピタッ™」 100円という最低投資額、直感的な「金額指定」モデル、一律のスプレッドというシンプルな手数料体系、そして元手ゼロでも始められるポイント利用の可能性。これらすべての要素が、投資に対する心理的な恐怖心や複雑さを取り除きます 。そのユーザー体験は、複雑な金融取引というより、オンラインショッピングの延長線上にあるように設計されています。
- 選定理由: 初心者が直面する最大の障壁は、心理的なものです。「かぶピタッ™」は、これらの障壁を体系的に解体します。リスクは最小限に感じられ、プロセスは身近で、コストは理解しやすい。これが、最初の一歩を最も踏み出しやすくする理由です。
「設定したら、あとはお任せの貯蓄家(長期積立派)」のために
- 最有力推奨:SMBC日興証券「キンカブ」 このタイプの投資家にとって古典的な選択肢は野村證券の「るいとう」ですが、その1.21%という手数料は長期的なリターンに対する大きな足かせとなります。「キンカブ」は、はるかに優れた代替案を提供します。投資家は銀行口座から証券口座への自動入金を設定し、買付手数料実質ゼロで規律ある定期的な購入を実行できます 。これにより、積立の規律と、はるかに有利なコスト構造を両立できます。
- 代替案:野村證券「るいとう」 伝統的な対面でのアドバイスを高く評価し、強制的な規律のためならプレミアムを支払うことを厭わず、配当の完全自動再投資を望む投資家にのみ推奨されます。
- 選定理由: 長期的な資産形成において、コストは最重要要素の一つです。「キンカブ」が「るいとう」に対して持つコスト優位性は絶大です。「るいとう」の完全自動化に比べれば多少の自己規律が求められますが、低コストによってもたらされる将来的なリターンの差は、その手間を補って余りあるでしょう。
「未来の株主(株主優待狙いの投資家)」のために
- 最有力推奨:SMBC日興証券「キンカブ」 この投資家層にとって、「自動スイング」機能はまさにキラーアプリケーションです 。単元未満株を完全な単元株へと転換するプロセスを自動化することで、目的である株主優待を可能な限り迅速かつ確実に手に入れることができます。
- 選定理由: ここでの目標は、効率的に単元株を取得することです。「キンカブ」は、その最終的かつ最も重要なステップを自動化します。他のサービスでも単元化は可能ですが、SMBC日興証券が提供する自動化は、権利確定日前の手続き忘れといった人的ミスを防ぐ、大きな利便性とリスク軽減策となります。ただし、NISA口座を利用する場合は、1年以内に単元化を達成するという特殊ルールを念頭に置いた購入計画が不可欠です 。なお、ごく一部の企業は単元未満の株主にも優待を提供していますが、これらは例外的なケースであることも付記しておきます 。
結論:あなたの投資の旅に、最適な道具を
本レポートで分析した3つのサービスは、それぞれが明確な個性と哲学を持っています。楽天証券の**「かぶピタッ™」は、ポイント経済圏を武器に、投資を大衆化するアクセスしやすいゲートウェイです。SMBC日興証券の「キンカブ」は、目標志向の投資家が柔軟かつパワフルに資産を形成するための万能ツールと言えます。そして、野村證券の「るいとう」**は、自らの規律よりも仕組みを信じる、ハンズオフの貯蓄家のための伝統的なプランです。
投資の新時代において、万人にとって「唯一絶対の最高のサービス」は存在しません。最適な選択は、個人の金融習慣(どのポイントを貯めているか)、投資目標(手軽なスタートか、長期的な積立か、株主優待の獲得か)、そして性格(自ら積極的に関与したいか、専門家や仕組みに任せたいか)によって大きく異なります。
最後に、この分野における激しい競争と技術革新は、間違いなく個人投資家にとって恩恵であると結論付けられます。サービスが進化し続けることで、資産形成への障壁はますます低くなり、より多くの人々が自らの手で経済的な未来を切り拓くことが可能になるでしょう。
引用文献
1. 楽天証券、7月16日(水)より「かぶピタッ™」サービス開始, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000656.000011088.html 2. 【7/16スタート!】かぶピタッ™(金額指定取引)サービス開始のお知らせ | 楽天証券, https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20250716-01.html 3. 楽天証券、7月16日(水)より「かぶピタッ(TM)」サービス開始 – Mapion, https://www.mapion.co.jp/news/release/000000656.000011088-all/ 4. 楽天証券「かぶピタッ™」とは?100円から株が買えるしくみとメリット・デメリットを解説, https://kabukiso.com/column/security/rakuten_fractional_stocks.html 5. 楽天証券の「かぶピタッ」は、国内株式を“100円”から購入できる! NISAの成長投資枠を上限まで使い切れるうえに、楽天ポイントで株を買えるのもメリット! – ダイヤモンド・オンライン, https://diamond.jp/zai/articles/-/1051670 6. 楽天証券が新サービス「かぶピタッ™」を開始、手数料無料で手軽に株取引が可能に – VOIX, https://voix.jp/money/stock-trading/12181/ 7. かぶピタッ™(金額指定取引)100円から株が買える!|楽天証券, https://www.rakuten-sec.co.jp/web/lp/fractional_stocks/ 8. 業界初!楽天証券、国内株式を100円から金額指定できる「かぶピタッ™」を開始 – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000648.000011088.html 9. かぶミニ®(単元未満株取引) | 国内株式 – 楽天証券, https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/ols/ 10. SMBC日興証券のサービスや手数料を紹介!メリット・デメリットも解説, https://kabukiso.com/security/nikko.html 11. キンカブ(金額・株数指定取引)の取扱対象銘柄に新たに7本のETFが追加! – PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000019056.html 12. キンカブ – SMBC日興証券, https://www.smbcnikko.co.jp/products/stock/kinkabu/ 13. 金額・株数指定取引(愛称:キンカブ)の売り注文画面の操作方法 – 日興イージートレード, https://trade.smbcnikko.co.jp/html/guide_kinkabu_sousa03.html 14. 記事から株が買える!初心者向け投資サービス「日興フロッギー」とは?, https://kabukiso.com/column/froggy.html 15. キンカブで株主優待はもらえますか。 – よくあるご質問, https://qa.smbcnikko.co.jp/faq/show/441?category_id=185&site_domain=default 16. るいとう(株式累積投資) 取扱商品 ちばぎん証券, https://www.chibagin-sec.co.jp/products/ruito/ 17. 株式累積投資 読み:かぶしきるいせきとうし – 証券用語解説集 – 野村證券, https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ka/ruitou.html 18. 株式積立(株式累積投資)|ソリューション・サービス – 野村證券, https://www.nomura.co.jp/solution/financial-assets/stock/tsumitate/ 19. るいとう(株式累積投資) | 株式 | 大和証券, https://www.daiwa.jp/products/equity/rui/ 20. ファントるいとう, https://www.saisoncard.co.jp/104/company/nomura/pdf/nomura_fund_cp.pdf 21. 単元未満株(端株)でもらえる株主優待一覧, https://www.kabuyutai.com/special/miman_list.html